NoMaDoS

一級建築士事務所

30 AUG 2019

ビル・ゲイツの自宅にリッチな瞑想室を勝手に設計してみた

[speech position="左" name="アツシ" content="こんにちは、一級建築士の永田です。"]

弊建築事務所は日頃から、今まで体験したことのないような空間体験を実現できる建築を考えているのですが、驚くことに、今回はなんと「あの方」からご依頼がありました。

かの有名なマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ様からです。前回のベゾス様に引き続き、また大富豪からの依頼になりました。

同じシアトルに拠点を持つベゾス様からゲイツ様に、私を紹介して頂いたのでしょうか。もしかして、私は知らずのうちに、全米に名を轟かせていたのかもしれません。本当に嘘みたいな出来事です。っていうか、嘘だと思います。

とはいえ、図に乗ることなく、依頼者さまの要望に応えていきたいと思います!

こちらがゲイツ様の要望をまとめたヒアリングシートです。

瞑想にご興味を持ち始めたゲイツ様へささやかなプレゼント

前回のベゾス様に引き続き、直接ヒアリングはしておりません

お客様の潜在的な欲求を満たす建築をお届けするため、徹底的な身辺調査を行った上、性格・趣味・過去の言動などから、ゲイツ様が今、絶対に欲しいであろう建築をプレゼントさせていただきます。

今回、私がゲイツ様にプレゼントしたいのは「瞑想空間」です。

ゲイツ様の瞑想への傾倒ぶりは随所で見受けられました。

ご自身のブログ「Gates Notes」にて、これまで瞑想には懐疑的だったところ、 アンディ・プディコム著の瞑想本に出会ってから、瞑想にはまり、今では週に2、3回、10分ほど瞑想するようになったそうです。時には、妻のメリンダと共に瞑想をしているとも。また、この本は、ビル・ゲイツが選ぶ2018年お気に入りの本5冊のうちの1冊に選ばれていました。

さらに、ゲイツ様は、Gate Noteで、次のように語っていらっしゃいます。「瞑想とは、スポーツをするときに筋肉を動かすのと同じように、瞑想は単に心のための運動であることがわかりました。私にとっては、それは、私の頭の中の考えに注意を払う方法を学び、それらから少しの距離をとり、私の頭の中の焦点を改善するための素晴らしいツール」と。

ゲイツ様らしさを盛り込んだ瞑想空間「ザナドゥ2.1」

ゲイツ様の家が、超ハイテクな大豪邸で「ザナドゥ2.0」と呼ばれていることをご存知でしょうか?

ザナドゥとは映画『市民ケーン』に登場する新聞王ケーンの「未完の大豪邸」の名前からとられています。ザナドゥ(Xanadu)という言葉は、「桃源郷」と訳され、もとは元(モンゴル)の 夏季の都であった上都をさす語でもあります。

今回はそんな約30年前から建設され始めた「未完の大豪邸」の次なる一歩、つまり、「ザナドゥ2.1」へのアップデートプロジェクトとして、ゲイツ様が近年興味を持ち始めた「瞑想のための空間」をワタクシ永田がご提案させていただきます。

今、イノベーションの布石として、自身のマインドを見つめる行為が注目されています。アップルの創始者スティーブ・ジョブズが傾倒していたように、禅から始まり、瞑想、マインドフルネスなど、イノベーションが自身の心の投影なのであれば、散らばった心を整えるための訓練が必要不可欠だと言われています。

僭越ながら今ゲイツさまに必要なのは、漫然と拡大し続けていく「ザナドゥ2.0」のアップデートなのではないでしょうか? 瞑想空間をもってして、ゲイツ様自身、そしてゲイツ様が関わられる事業自体を、整えようとするプロジェクト「ザナドゥ2.1」が今必要なのです。さぁ、無我の境地でWindowsを次の次元へ!

瞑想体験ができるリッチな空間

建設予定地は、ゲイツ様自宅の敷地内。
ザナドゥ2.0が広がる広大な土地に、このような空間を設計しました。

【内観】

いかがでしょう。この「無」を表現した大空間…!

【上から】

【断面】

ゲイツ様の広大な自邸に調和するように、高層にすることは避け、地下に大空間を設けました。地下は、温熱環境が安定しているだけでなく、遮音性にも優れます。さらに、天井高の高い空間は、発想力を高めるという学術的データもあり、最大限に瞑想に特化した空間を実現しました。ぜひこの大空間で思う存分、精神を解放していただければと思います。

【出入口の詳細平面】

瞑想時になるべく視界に何も入らないように、出入り口の扉は外開きとし、内側には取っ手を設けず、扉をあえて視認しにくいデザインにしています。細部までこだわり尽くした「禅ディテール」です。

【椅子】

普段ゲイツ様は快適な椅子で瞑想を行っているとのことなので、部屋にも大きな椅子を設けております。中心に設置することで、部屋の方向性を排除しました。また、照明を椅子の中心にグレアレスのアップライトとして設置することで、光源が目に入らないようするとともに、照明による方向性をも排除し、抽象空間となるように設計しています。

以上が、基本的な空間の説明になります。10人程度での利用も可能ですので、是非、ゲストの方々にも開放し、おもてなしのひとつに瞑想体験を提供してみてはいかがでしょう。

また、オプション機能として、壁面全体をゲイツ様自邸のデジタルアクアリウムのように、LEDスクリーンにすることも可能です。

よりより禅の境地を体感するために、禅を表現した日本庭園「枯山水」などをLEDスクリーンに映し出せば、そこはもうデジタル枯山水の中。ザナドゥ内に日本古来の禅フィールドが誕生します。

まとめ

さて、ゲイツ様にお届けしたい「ザナドゥ2.1」いかがでしたか?

今回のゲイツ様の提案も、徹底的な身辺調査によって、自然と提案の方向性が決まっていきました。もしこの建築が実現できれば、下記のように、

・より洗練された瞑想によって、ゲイツ様の心がリフレッシュ

・そして、ゲイツ様の事業自体が、整っていく
・建設が注目され、瞑想が波及し、より多くの人間が洗練され、世界が整っていく
・自邸のおもてなし施設が増え、施設としてレベルアップ
・地下空間は、避難シェルターとしても機能し得る

このように、少なくとも一石五鳥のメリットが実現します。

また、ゲイツ様は、各地にシェルターを保有していたり、パンデミックに対する危機意識が非常に強いことで知られています。もし地球規模のパンデミックが起こった際は、この空間に人類の現存者が逃げ込むことになるでしょう。そうなれば、この場所は瞑想を通して冷静に地球の状況を分析し、未曾有の危機に立ち向かっていくための「人類の作戦基地」になるかもしれない。まるでアダムとイヴが暮らしていた楽園のように。それがまさに桃源郷(ザナドゥ)なのです。

あっ、妄想が過ぎてしまいましたね。さて、ゲイツ様、いかがでしょうか。今回は、ワタクシの考える理想の計画とさせていただきました。計画地や規模、形態など詳細について、ご相談承っております。是非是非、ご検討ください。みなさん妄想のしすぎにはお気をつけください。

執筆:アツシ(永田敦)
東北大学大学院修了後、アトリエ系建築士事務所にて建築家に師事し住宅、工場、倉庫、商業ビルの設計、民家改修設計の経験を積む。独立し設計活動を行いながら、NoMaDosに加入。シンプルで分かりやすいアイデアを生み出し磨くことを常に意識している。一級建築士。既存住宅状況調査技術士。
受賞に、トウキョウ建築コレクション2013入選/タマホームデザインコンペティション2012 優秀賞/セントラル硝子国際建築設計競技 佳作/木愛の会 第二回設計競技 最優秀賞/キルコス国際建築設計コンペティション 金賞3件受賞/北海道卒業設計合同講評会2011 優秀賞/第36回五三会建築設計競技 佳作/タイニーハウスデザインコンテスト2019 小菅村長賞

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