NoMaDoS

一級建築士事務所

風に祈りを捧げる谷

NoMaDoSが空想と妄想のみで作り上げる、未だ見ぬ未来の建築「新世界建築」。

今回は、第3作目「風に祈りを捧げる谷」。

もしもヴィーガンが独自の生態系を築いたとしたら?

もしも風の力を借りて生きる民族がいたとしたら?

そんな未知のコンセプトを重ねて出来上がったバイオサイエンスな今作。
空想度が星3つで、一見するとファンタジーを彷彿とさせますが、その多くが実現可能なテクノロジーで構成されており、実はそう遠くはない未来の話なのかもしれません。

今回の新世界建築に込めた思考のプロセスとこだわりを、メンバーが語ります。

ヴィーガンと風の谷

ー「ヴィーガンが住む谷」というコンセプトはどのようにして生まれた?

 [speech position="左" name="でんでん" content="「ヴィーガンが菜食主義に悩んでいる」というニュースを見たのがきっかけです。ヴィーガンになった人たちは倫理的な理由で肉食を避けているはずなのに、自分たちが食べる野菜を育てる過程で動物が駆除されてしまっている、そんな矛盾を抱えている状況らしく。
最近は完全栄養食など摂取する食物にテクノロジーが関与し始めたので、肉食・草食にとらわれない食の可能性もあるだろうと思って、思考を重ねていきました。
しかも、今作を制作している最終段階で、農業を介さずに食料を生産するためのイノベーションを開発するフードテック企業が出てきたり、「やはり世の中の動きはその方向に進むんだ!」という納得感を持つとともに、「マジで実現するのか!」というテクノロジーのスピードとパワーを感じました。"] 

ー風で生きる人「ウィンディアン」の発想は?

 [speech position="左" name="ふみちゃん" content="普通、建物の構造を考える際には、風や地震や雪といった自然環境への耐久度を検討します。でも、抗うのではなく風に乗って、あるいは風の力を借りて成立する建物ってどうなるんだろうと考えたのが発端です。
考えていくうちに、建築に限らず、植物が光合成するように、人間が「風合成」する未来が来るんじゃないか? という話になって、「ウィンディアン」という言葉が生まれました。"] 

風とともに醸成される文化

ー風で動く人工生物「ヴィンドゥルレガー」はどのような過程で生まれた?

 [speech position="左" name="でんでん" content="ヴィンドゥルレガーは、現代アーティストであるテオ・ヤンセンの代表作「ストランドビースト」をオマージュして発想しました。
ストランドビーストは、風を受けて駆動する生物を模したアート作品なんです。ヤンセンはビーストたちを生物の一種としてとらえるような発言をしていて、非生物なのに生物的な世界観にいる点が、肉食・草食を超えたスタイルや、テクノロジーと自然エネルギーの共生という要素に結びつきを持つと思いました。
ヴィンドゥルレガーとは、アイスランド語で「風の足」という意味で、ちょっとだけでもアイスランド要素を入れてみようと思って名付けました。裏設定で、作者の名前はフィン・アーセンとなっていて、明らかにテオ・ヤンセンをオマージュしてます。"] 

 [speech position="左" name="ふみちゃん" content="オリジナルタイプのイラストを描き始めたら、馬のように人間が乗れるタイプや、横移動が得意なカニタイプ、這うように進むワニタイプなど、次々とイメージが生まれ始めました!"] 

ー今回は「風調律師」という文化的側面を持った職業も登場してますね。

 [speech position="左" name="アツシ" content="風調律師が、全ての糸とつながっている繭の中で、糸の張力を操り、崖を流れる風をコントロールしています。この糸を弾いたりなんかすると、崖中に音楽が鳴り響る設定です。"] 

 [speech position="左" name="でんでん" content="風調律師という設定は、糸が「張り巡らされた建築」のアウトプットがある程度決まったタイミングで出てきたアイデアでした。今回の作品のテーマから、どこか宗教性との親和性を感じていて、「祭祀」という設定をどこかに入れたかったんです。
もともとは、風でエネルギーを生み出して成り立つ建築と民族から発想して、風の強さや流れを人工的な遮蔽物で作り出す「風設計士」という設定を採用してたんです。
ですが、糸という要素や儀式的なイメージから、風に合わせた建築のコントロールという機能的役割と、音を操る文化的な役割を合わせたアーティストのような存在に設定を調整しました。"] 

風と糸で紡がれていく生活

ー今回の建築はどのように発想した? 

[speech position="左" name="アツシ" content="崖の間を風が軽やかに、あるいは激しく吹いていて、変幻自在な蜘蛛の糸が、繭のような住処を支えています。繭は常に風で少し揺れている状態です。"] 

 [speech position="左" name="アツシ" content="住処はお皿のような平べったい形をしています。少し向きを変えれば、風を受けたり、受け流せたりできるような構造を目指しました。"] 

 [speech position="左" name="りょうちゃん" content="今回は糸を全面に使うということで考えてみました。糸が現実世界の配管や配線のような機能を持ってたら面白いのではないか? が出発点。
また繭が住居だけでなく、エネルギーなどをためこむ部分としてとらえられれば、よりインフラとしても整備しやすそうだと、設備の視点から妄想しました"] 

アップデートし続ける新世界マップ

第3作「風に祈りを捧げる谷」いかがだったでしょうか?

NoMaDoSは、新たな世界を建築し続けています。のぞいてみれば、あなたの世界も変わるかも?

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